「くさっていたいの心」
どらぽん
三人の兄弟がいました。
上兄は、頭は良いのですが、なまけものでした。
ちい兄は、頭はふつうで、体は丈夫でした。
弟は、頭は悪く、しかも、なまけものでした。
ちい兄は、上の兄の、頭がいいだけで、ちっとも
働かず、自分は、体が丈夫なだけがとりえなもの
だから、働かされていて、少し、なまけ心を出し
始めたら、父親に怒られました。けれども、
腹の立つちい兄は、父親にまで反抗し、
「なんで、オレだけ、働かなきゃならないんだ。
少しは、上兄のように、オレもなまけたい」
「お前は、そんなにも、なまけたいなら、
一生なまけてろ、この家から出ていけ」
父親からそう言われて、ちい兄は、
泣く泣く、家から追い出されました。
上兄から、バカだな! と、見られて、
くやしくて、泣いて、泣き疲れて、
ちい兄は、それから姿をくらませました。
上兄は、こそくに立ち回り、なまけ続けました。
弟は、頭が悪く上兄の物まねをし、なまけ続け、
父親からも母親からも、同情されていたので、
なまけていても、問題はありませんでした。
かわいそうな、ちい兄に対して、上兄と弟は、
ちっとも働かないで、毎日、両親を働かせて、
遊び呆けていました。
何年も、何年も月日がたって、父親が
亡くなりました。
父親は亡くなる際に、ちい兄が戻ってきたら、
財産をすべて、ちい兄に残すと言い残し、
亡くなっていったのでした。
上兄も弟も驚いてしまって、
「何を言うんだ、お父さん」
とか、言うんですが、父親は、そのまま亡くなった
ということです。
上兄も弟も父親に腹を立てるのですが、やがて、
ちい兄が戻ってこないのをいいことに、母親から、
財産を奪って、勝手に相続してしまいました。
そのあと、母親は、呆気なく亡くなり、死因は分りません。
上兄と弟は、両親の残した財産で、遊び呆け続けました。
すっかり、親の財産使い果たし、貧乏な暮らしになった、
上の兄と弟ですが、まったくちっとも、働く気はありません。
それからです。ちい兄が、家に戻って来たのはその時でした。
ある程度の財を蓄え、帰郷してから、両親の墓に手を合わせ、
荒れ放題の墓と、すでに他界した両親を思いを寄せて、ちい兄は、
涙しました。
上兄と弟は、ほくほくして、もみ手するように、
「なあ、弟よ。オレは生活に困っている。助けてくれよ」
弟も言います。
「兄ちゃん。助けてよ」
けれど、ちい兄は言います。
「働け! そして、墓くらい掃除して、
手を合わせてみよ」
「なんだと! 」
上兄と弟は、激怒しましたが、
ちい兄は、それから何も言わず、また姿を
くらませました。
数年ののち、上兄と弟が、餓死した姿で、
村人に発見されたということです。
遺体は、腐って、半ばミイラ化していました。
上兄と弟、体はネズミに食い荒らされているというのに、
二人の遺体の周囲には、ネズミの小骨が散らばり、
そのうえ、ゴキブリの羽根やら、足やらのが残っていたのか、
それらが、二人の遺体の周り中に、散らばっていたということです。
なんとも、むごい死に方だな。
村人たちは、気の毒なのと、憐れむのと、複雑な気持ちで、
ただ手を合わせたということです。
おしまい