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童話を書いたよ!!

「幸せとはなんでしょう」            

             どらぽん

昨日があって、明日がある。

道を歩くように、あたりまえの人生がある。

そんなことを思う。おとしよりがいた。

若いころは、船乗りだった、それから、積み荷の

荷下ろしの仕事をやり、さらに年を取って、田舎の

農業をやって、牛を飼い羊を飼った。

今は、ベッドに寝たきりであって、死ぬのを待つばかり。

枕元に死神が現れた。

「おお、わしも死ぬんだ」

死神が言った。

「死ぬよ」

「うん」

おとしよりは、ただうなづいた。

死神は言う。

「お前は、死ぬのはこわくないのか」

「うん」

「そうか」

死神は持っている鎌で、老人の命をうばった。

老人は死んだ。

老人は死んで、魂になった。

死神言った。

「お前はなかなか死に際がよかったので、天国につれてやってもいいぞ」

と、言う。

「うん」

老人は返す。

死神は、

「お前は本当に素直だな」

「うん」

老人は言う。

本当に素直なやつだ。死神は内心思う。しかし、

あんまり素直なのも怪しいものと、疑ってみた。

だから、言った。

「お前は、ほんとうに、うんばかりだな」

「そうだね。子供のころから、素直になれと

言われて育ったんだ」

「そうなのか」

死神も、ほんとうに素直なのも、バカかと思うが、

素直な老人もいいものだと思うと、バカはバカなりに、

使い勝手がいいと、にたりと笑った。

そうして、老人は言った。

「最後に、わがままをいってもいか? 」

いままで。あんまりに素直だったので、

死神は、なんとかかなえてやろうと、思った。

「いいだろう、なんでもいいぞ」

老人は言った。

「天国には行きたくないから、地獄がいい」

「本気か! 」

「うん」

「ほう」

死神は、バカにした目で老人の魂を見ると、

老人は地獄がどんなものかわからんのではないか?

と、思った。

自分は、死神。こいつは死神を怖くないのか?

また、そう思うと、死神は、

「天国はいいところだ、地獄は嫌なところだ」

知っているだろう?

と、重ねて言うと、

「うん」

と、老人は答えた。

老人はそれから言った。

「オレの知り合いは、みんな地獄へ落ちた。

だから、知っているやつらのいる、地獄へ

行きたい。

天国はいいところだ。けれど、そこはオレの

知らない奴らばかり。

知らない奴らばかりのところに行っても、

ちっとも楽しくない」

死神は、絶句した。

「そうか、知り合いは、みんな地獄か! 」

死神は、泣けてきて、言った。

「すまんが、お前は天国へ連れていく」

老人が言った。

「天国! そこは地獄だ!! 」

死神が、にたりと最後に笑った。

          おしまい

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