「空と雲とのあいだには・・今日も冷たく金がない;; 」
作 どらぽん
わたしは雲。高い空、低い空にいる。
わたしは空。雲とともに、人々を見ています。
雲と空がいました。人々を眺めていました。
人がおもしろくて仕方ないので、神様にお願いして、
しばらくの間、雲と空を神さまに代わりに見てもらうことにしました。
神様も、雲と空は、ずっと働きづめだったので、
休みを与えるつもりで、こころよく願いを叶えたのでした。
人間になった雲は、男になりました。
たくましい筋骨隆々な大男です。
人間になった空は、女になりました。
非常に魅力的なグラマーです。
男の雲と、女の空は、人間世界にあらわれました。
夫婦かと思われたようで、
「ご夫婦ですか? 」
「ずっと一緒にいるから、分からないよ」
なんかこう、人間たちは、雲と空を、
いやらしい目線で見ては、ニタニタ笑うのです。
雲と空は、いたたまれなくなりました。
けれども、旅人ということにしてあったので、
いろいろな町にいっては見物しました。
男と女の関係を聞かれること、お金を持っているか、
聞かれること。お金がないのがひどくつらいのです。
二人は全くお金もなしに、人間世界に来たので、
だから、お金がないと人間の世界は、とてつもなく、
きゅうくつで、つまらないと気づいてから、人間は、
楽しそうに見えて、本当はずっとずっとしんどい、
くだらないものだと思いました。
「なんで、お金なんてものがあるんだ! なくてもいいだろうに! 」
と、雲が言うと、人間が怒って、
「こら! 何さまのつもりだ! 」
ほかの人間も、「なんだい! けったいな。
自分を王様くらいに思っているつもりか? いくら、王様でも、
金を持ってきな。そしたら、いい思いをさせてやるよ」
ニタニタ人間が笑うと、つばを吐きかけてきて、雲は腹を立てると
同時に、みじめな気分になりました。
悲しくて泣けてきて、雲は空に泣きました。
大男がおいおい泣くのです。
空は言いました。
「雲。もう、天上に帰ろう。神様に願おう。
おれたちは、人間の世界の本当を知らなかった。
人間世界は、おれたちにはつらすぎた。
人間の生きざまというやつを、軽く見過ぎていたんだ」
そういう空に、雲はこくりとうなづいて、二人は天上に
戻ってゆくのでした。
空は空であること。雲は雲であることを、
神様に非常に感謝したということです。
世の中、金じゃないが金なんだなあ?
おしまい